ネットと人間関係


チャット歴こそわずか1ヶ月ですけど、ネット歴は7年
いろいろな事件やトラブルに遭遇し、いろいろな相談も受けました。
以下は、他の講座と違って、それらを経験した私の勝手な感想です。
当然、異なる感想や意見をお持ちの方もいると思います。

特に後半は、かなり小難しい話になります。

適当にお読みください(笑)。

なお、文中「リアル」は現実の社会のこと。
「ネット」もしくは「バーチャル」はインターネットの内部
での話の意味です。



■ネットではリアルより気を遣う?

チャットにしろ、メールにしろ、人はコミュニケーションを求めるから
参加するのだと思います。

中には、自分の言いたいことだけ発言することがコミュニケーションだ
と考えている人も居るようですが、そういう人はあまりチャットには向
いていないようです。(笑)

当然、相手の言うことを聞いて、答える、という形で、コミュニケーシ
ョンは成立します。
さて、少人数はともかく、大人数の部屋では、ネットではリアル以上の
気の遣いかたが、要求されるようです。

例えば、学校時代の教室の休憩時間を思い出してください。
何人かの単位で話に夢中になっていますが、各グループは、お互いの動
きをそれほど注意していません。誰かが教室を出ていっても、その人の
属しているグループ以外はそのことに気がつきません。

ところがチャットでは円卓で話をしているようなものです。
誰がどのような発言をしているかが見えています。
誰かが入ってきたり、誰かが席を立てば、全員が、そのときの会話を中
断して、挨拶するのがひとつのマナーになっています。


■八方美人症候群

もちろん、このことは悪いことではありません。
特に、慣れてない初心者が入ってきたとき、気を遣ってくれる。
その優しさのおかげて、私も、あるチャットサイトに居座るようになっ
てしまいました(笑)。

少し問題なのは、後述するように、ネットではどうも感情の起伏が
激しくなりがちだということと、
もう一つは、そこに集合した人達の全員に対して気を遣いすぎるあまり
に「全員の反応」を気にしすぎる傾向にある、という点です。

気を遣いすぎることは問題ないでしょう。黙っている人がいれば。
「だいじょぶか?」と聞いたり、挨拶したり、気を遣われる方としては
嬉しいものです。
ところが、自分が入ったとたん、誰かが落ちたりとかすると、自分は嫌
われているのではないか、あるいは、自分の言動が相手を傷つけたので
はないかと気になりはじめます。
親しいAさんとBさんがケンカを始めた場合、どちらともケンカしたく
ない、なんとか仲良くなって欲しいと気をもみます。

このようなことは、リアルでもよくあることなのですが、ネットでは、
それが、よく言えば純粋に、悪く言えば極端に出る傾向があるようです。


■リアルとネットの二つの違い

リアルでもネットでも、好感を抱いたり、相性が悪いとかいう感情や、
仲良くなったり、ケンカしたり、「結果」としての感情の持ち方は変わ
りがありません。
ただ、私は、そういう結果を呼ぶまでの「条件」に大きな違いがあると
考えています。

リアルとネットで、コミュニケーションを行う場合の、もっとも大きな
違いは、二つあります。

ひとつは、リアルでは、「人間関係」がある程度、固定された枠がある
のに、ネットでは非常に流動的、という点です(次項)。
ところが「流動的」であることを忘れて、リアルと同じレベルで、人間
関係を保とうとすると、いろいろ思い悩んだり、トラブルになります。

もう一つは、リアルでは、コミュニケーションの前に、いろいろな、事
前情報があるのに対して、ネットでは予備知識無しに、突然、コミュニ
ケーションが始まってしまいます。
このことは、感情の動きを非常に加速していると考えます。


■ネットはツアーと同じ

リアルでの人間関係では、ほとんどの場合、「いやでもつきあわなけれ
ばならない」ということが前提になります。
近所付き合いでは、自分か、相手が引っ越さない限りは「付き合い」が
継続します。
学校や職場の人間関係も同じです。中学校のPTAでも、最低3年間は
付き合いが続きます。
期間の長短は別として、「人間関係を継続しなければならない」という
「固定された枠」を前提で、成り立つコミュニケーションでは、当然
「抑制」が必要になります。
少々腹が立っても、また会わざるを得ない以上、腹立ちを押さえます。

ところが、ネットでは、「継続」は前提ではありません。
みなさんが利用しているチャットの場でも、1ヶ月もたてば、メンバー
が随分変わっていることに気がつきませんか?
オフで会って、友達付き合いでもしない限り、ネットでの「友達」は、
ある日突然居なくなったら、それでおしまいです。
逆に言えば、気に入らない人ばかりが集まっていたり、気まずい思いを
したら、他の「場」を探せばいいわけです。

ネットでの友人は、「ツアー」で一緒になった仲間に似ています。
ツアーが終了したら、参加者はみなバラバラになり、別々の生活をはじ
めます。もちろん、ツアーで知り合って、仲良くなって、ツアー終了後
も友達付き合いをはじめたり、結婚することもあるでしょう。

当然、みなさんも、これまで、いろいろなツアーに参加したことがある
と思います。そのツアーで、感じの良かった人、悪かった人、どれだけ
覚えていますか?

冷たい言い方かもしれませんが、ネットでの「付き合い」は、ツアーで
知り合った人に対しての付き合い方、つまり、「継続」を条件としない、
ある程度の「距離感」が必要ではないでしょうか?


■相手の情報をしると言うこと

もう一つは、私が「属性情報」と呼んでいるものです。

ある人間が存在するとき、その人間についてのいろいろな情報があります。
男性、××歳、××座、血液型、身長、体重、住所、勤務先、性格・・・
通常、コミュニケーションは、これらの属性情報を探り合いながら成立します。
はじめてあったとき、名刺交換するのは、勤務先や役職などの情報を相手
に渡すわけです。そして、年齢や雰囲気などを推測しながら、どういう言
葉使いをするか、何を話すかを考えるわけです。

もし、昔からの友達なら、これらの「属性情報」は、当然頭の中に入って
います。そして、当然、相手も「こちらの属性情報を知っている」という
前提でコミュニケーションを行います。

例えば、大失敗をした相手に、「あほか」と言ったとき、相手がこちらの
ことを嫌っていたり、こちらを全然知らなければケンカになります。
でも、「自分は相手のことを心配していて友達だと思っている」というこ
とを相手が知っていれば、ニヤニヤされるだけで済むでしょう。

つまり、自分が相手の情報を持っている、だけではなく、同時に、相手も
自分の情報を持っている、ということを前提として話しているわけです。
ある意味で、リアルでの会話は「こう、受けとってもらえるだろう」とい
う甘え、あるいは予断に立脚しているとも言えます。


■ネットはよそ者同士の場

江戸時代以前のように、交通手段が発達していないころは、コミュニケー
ションの相手は「限られて」いました。
だから、そういう情報を知らない「よそ者」が入り込んでくると、はじき
出されることもあったでしょう。

ところが、都会が成立し、よそ者ばかりが集まる「共同体」ができました。

しかし、どうも日本人は、そういう「属性情報を持たない同士」のコミュ
ニケーションが苦手なようです。このため、会社などのどうしても必要に
なる人間関係は作っても、さほど必要がない「近所」付き合いはしない、
いわゆる都会の孤独です。

そういう人が、突然、ネットで出逢うわけです。

リアルなら、視覚からいろいろな情報が入ってきます。しかし、チャット
では最初は、自己紹介などで「男性、××歳、××県」程度の情報しかあり
ません。しかも、この自己紹介ですら、嘘か本当か確かめようもありません。


■抑制が少ない「知らない人同士の会話」

基本的には、「属性情報」は感情の吐露には抑制因子として働く、と私は
考えています。例えば、年上や上司という情報を知っていれば、乱暴な言
葉使いにはならないでしょう。

「深くつきあう」ということは、そういう属性情報を知った上で、抑制因
子である属性情報を乗り越えた付き合いをすること、いわゆる「垣根を超
えた」付き合いではないでしょうか?

ところが、ネットでは、こういう属性情報を知りません。つまり、「垣根
が全くない」状態でコミュニケーションが始まります。
そのことが、「最初から深くつきあっている」という錯覚を与えているの
ではないかと考えています。

もう一つ、親しい間のコミュニケーションでは、「相手も自分のことをわ
かってくれている」という前提(あるいは相互の甘え)があると書きました。
ところが、前述のように「アホ」と呼んでも、怒り出さない相手が居たとき、
実は、あなたの「真意」をわかってなくても、マナーだけで、怒らずに、
聞いてくれるかもしれません。そのとき、「あっ、この相手は私のことを
分かってくれて居るんだ」という「誤解」が生じやすくなります。

また、ネットでの文字では、リアルの会話と違って、声の質や抑揚、顔の表
情など、相手が何を言いたいのかを判断する材料が極端に少ないと言えます。


■感情の起伏が激しいネット

以上のような要素は、全て、「相手の言葉を誤解しやすい」ということに
つながります。

そして、この場合の「誤解」は、うまくいっているときには「良い方に解釈」
してしまい、ズレが生じたときには「悪い方に解釈」されてしまいます。

「ほんの少ししか話していないのに、10年間つきあった人より、私のことを
分かってくれた。」実は、これは、「分かってくれている」という思いこみ
でしかない場合も少なくありません。

一方、「良い誤解」が解けてきたのに過ぎない場合でも、「裏切られた」と
いう極端な反動につながる場合も多いでしょう。

しかも、感情を抑える属性情報がないわけですから、いい方にも、悪い方に
も、感情の動きのスピードは加速されると考えます。


■距離感と抑制が不可欠

当たり前のことですが、リアルでも、実は、「出逢いと別れ」は不可欠です。
先ほど、リアルでは「継続することを前提」と書きましたが、この、「継続」
も、長い時間軸で考えたら、永遠に継続するわけではありません。

もう一度、先ほどのツアーの例えを思い出してください。
ツアーの同行客でいやな人がいたからといって、一々腹を立てていても始まり
ません。あるいは、ツアーの客同士のトラブルで、あなたの一生が変わるわけ
でもありません。

もちろん、ツアーで知り合って結婚したり、長い友達になることもあります。

要は、ネットでは、ある程度の距離感を置いて、その中で、本当に大事な人を
見つけることだけ考える。これが一番ではないでしょうか?